1 大都市居住の意味
2 福祉先進国・英国
3 英国の高齢者住宅
4 英国新高齢者住宅
5 景観に配慮する街づくり
1 大都市居住                              萩原信行 
高齢化社会を踏まえて
 現在、都市にはさまざまな都市問題が発生しています。そのなかに都市中心部の
人口が少しづつ郊外に流出して夜間人口がどんどん減少していくドーナッツ化現象
があります。まず車社会では郊外の方が便利です。また無計画な再開発で既存の
コミュニティーが壊れつつあります。そしてバブル経済で無駄なビル建設や遊休地が
発生し、美しい町並みが失われています。こうしたことが原因で、郊外のニュータウン
住宅に移り住む人が増えてきたのです。
 都市というのは放っておくとどんどん広がっていくものですから、戦後ロンドンが
実現させたように幅10kmのグリーンベルトで都市を囲むといった方法も日本で実際
に考えられたことがあるのですが、経済を優先して頓挫してしまいました。 
 しかし都市中心部はコミュニティーがある程度出来上がっているし、交通、買い物
などの利便性があり概して住みやすいといえます。都市が魅力的であるためにはそこ
に住む人がいて町自体が生きていなければいけないでしょう。街の賑わいは都市にと
ってどうしても必要なものなのです。そこで小さくても都市生活を満喫できる良質の
都市住宅がどうしても必要であると私は考えています。
 昔の町は職と住が隣接しているのが基本でした。高齢化社会に入りホームオフィス
で自立することで職住近接も悪くないという価値観も出てくるでしょう。そこで都市生活の
楽しさが味わえる住宅のスタイルを開発していく必要があります。掘りごたつのよう
な居間に家族が集える仕掛けがあるとか縁側のようにのんびりできる空間があるのも
良いでしょう。また地域に溶け込んだ住宅の工夫も必要です。
 日本のニュータウンは家族層を対象とし、ある時期集中的に作られました。今一世
代たって年齢層が代わってくると、交通の不便さや坂道など高齢者には住みにくいこ
とがわかり問題になっています。むしろ都市中心部こそ文化施設や歴史的な遺産も多
く、高齢者に暮らしやすいところといえるでしょう。
 高齢化社会向きの都市住宅のあり方として極端な提案がありました。都市中心部を
青年層と高齢者層の町とし災害時の互助や世代間の交流を促す。一方郊外部にあるニ
ュータウンは子供つき家族層の町として、年齢層にあわせて移住させるという考えです。
この移住論は本気で考えている人がいるのですが、私は土地に執着する農耕民族で
ある日本人が移住に向くかどうか疑問です。それより新しい都市型住いのスタイルを
開発する必要があるでしょう。
 私の提案する都市型の住形式は次の3つです。
1 悪条件の都心でも家族の成長変化に応じた対応のある終の棲家としての都市住宅
2 高齢者同志が共に暮らし介護による社会的費用負担を軽減する都市型コミュニティ
3 多世代の家族が同じ住棟に複合して住むことによって、互助関係を持つ都市型の住形式
      
ニュータウン
都市住宅